TX4の独り言
第21話~第30話
第21話 桜木町駅、出入禁止
2018/11/12 累積走行 249,401km
独り言も久しぶりの更新ですね。10月は本当に忙しかったです。
観光ガイドタクシーを15年やっておりますが、ここへ来て講演、講習会講師の依頼が立て続けに舞い込みまして、
“てんやわんや”とはこの事かと思い知らされました。
気候も穏やかになり、本業の観光タクシーの方もご注文が続々と寄せられて、本当に嬉しい悲鳴でした。
中原タクシー史上初、クワトロ・ブッキング、4つのご注文が重なるという・・・。
身体も車両も一つしか無いので(笑)、信頼のおけるお仲間へお仕事を振ったりして随分ご協力もいただきました。
そんな大騒ぎも一段落しまして、11月、いつものように午後3時から終電車まで、時には残業朝6時までなど、普段の生活パターンが戻ってきました。
しかし、一つだけ、普段と違うことが起きてしまいました。
“桜木町駅、入構出来なくなった”
私、別に悪いことをしたわけではありません、誤解無きように(笑)!!
仕事のベースにしている桜木町駅タクシー乗り場ですが、国交省の方針に従って県内初の「優良タクシー乗り場」が開設されたのです。
一つだった乗り場が改造されて、新たに【優良タクシー乗り場】と【一般タクシー乗り場】の二つに分かれたのです。
もう10年くらい前のことですが、所謂“雲助タクシー”を排除する目的で、交通違反・事故・苦情など総合的に審査して
会社のランクを付けましょうと。 神奈川では“優良”と“一般”の2ランクが設けられたのです。
この審査って奴がとんでもない代物で、大甘に甘いのです。
と言うか、審査基準がザルというか、現在、県下全タクシー会社の97%が優良社という結果になっているのです。
優良タクシー会社の車両には優良マークが貼られていて、優良乗り場に入構出来るって寸法です。
実際には、今までの法人メンバーが今まで通り入構していて、外見は変化有りません。
私は個人タクシーです。
なので、法人のランキング審査対象ではありませんが、その代わりというか、個人は業界団体独自の評価制度を持って平成10年から運用しています。
“☆☆☆”って行灯に表示されているのが優良個人タクシー、無事故無違反の証なのです。
私は、交通違反があって現在二つ星。つまり“優良”ではありません。
こんな個人タクシーは沢山いまして、桜木町乗り場の常連個人のうち、半数以上が☆☆☆ではありません。
さて、私は一般タクシー乗り場へ並ぶわけですが、お客様は前方の優良車両乗り場に並び、一般車乗り場には並びません。
これは写真をご覧下さればお解りの通り「一般を嫌って」という訳ではなく、ただ単純に乗り場の並び順の問題です。
ウワサに聞いたのですが、一般レーンへ試しに並んだタクシーが、なんと
『2時間半、出られなかった(T-T)』 orz
という事です。 したがって、現在、一般レーンに並ぶタクシーは皆無となり、実質的な一般タクシー入構禁止乗り場となっているわけです。
私は、乗り場の構造から考えて察しが付いていたので、10月は入構していません。というか、出来ません。
早く☆☆☆に、なりた~い!!!
※掲載写真出典:タウンニュース2018/10/11より
第22話 それ、遠回りですよ
2018/12/04 累積走行 251,956km
「こんにちは~、どちらまでお送り致しますか?」
「はい、○○○○ですね、かしこまりました」
「ご指定のコースはございますか?」
「それでは、最短経路は○○○○経由と思いますが、よろしいですか?」
だいたい、こんな感じでお客様とのイニシャル・コンタクトが進みます。
まず、“ご指定のコース”が無い場合がほとんどで、こちらからの提案で事は進みます。
しかし、1割くらいの割合でコースの指示をするお客様が居られます。
私にとっては大歓迎でして、何も考えずにスタート出来るので気が楽です。
例えば、桜木町から山元町へ行く場合、地蔵坂を上がるか、打越を上がるか、悩みどころです。
ほとんどの方は打越コースを指示されますが、中には「地蔵坂で」 と、仰る方も居られます。
地蔵坂上信号の待ち時間が長い傾向があるので、気を揉むのですが、お客様本人がそうしろ、と仰るので何の問題も無いわけです。
地蔵坂にしろ打越にしろ、距離にさほどの差がありませんので、メーターに大きな差異が出るわけでも無く、どちらでも良いのですがね。
お客様の指示したコースが、明らかに遠回り、というケースがあります。
しかし、こちらとしては何も言うことありません。
不親切だろう!近道を教えないのか? と怒らないで下さい。 お客様によっては、
「近道があるのは知っている、でも、そっちは絶対通りたくない」
という事情を抱えている場合があるためです。 ソコへ持ってきて運転手が、
「それ、遠回りですよ」
などと言おうものならお客様がブチ切れる場合が無きにしも非ず。この駆け引きが客商売なのです。
時々、と言うか頻繁に、経路はおろか目的地さえ明確に伝えないお客様が居られます。
例えば、桜木町からマイカルと言うから新山下・山手警察・本牧通りと提案して行くじゃないですか、
実際の目的地は二ノ谷の先だったりするわけですよ。 それなら最短経路の正解は本牧緑ヶ丘経由じゃないですか!
「え~?! あんたがマイカルと言うからこの道を出来たんじゃんか」
などと口には出さないけれども、出来るだけ近道で行ってさしあげようと考える身には、やれやれと思います。
え? さっきと話が違う?
当然気分悪いですよ、二ノ谷だって、ちゃんと目的地を言わないから遠回りになったじゃないですか。
たとえば、二ノ谷だけど緑が丘は通りたくない、とか伝えて下さい。
なにか意図せず(?笑)遠回りになるのは非常に気持ちが悪いです。でも、黙ってハンドルを握ります。
「ありがとうございました~」
笑顔でお見送りします。 しかし、気持ち悪いんです、遠回りは。
お客様は、大きく目標を伝える傾向にあります。
細かい場所を運転手に言っても“どうせ分からないだろうから”と思うのかも知れません。
これは気持ちの良いものじゃありません。
経路を伝えないのも、私は悪い意味での“おまかせ文化”だと思います。
経路も目的地にも、ちゃんと着くにはお客様の協力が絶対不可欠です。
“どうせ”と思わず、ちゃんと経路・目的地を伝えましょう。
「それ、遠回りですよ」
第23話 ロンタク、桜木町駅復活!!
2018/12/10 累積走行 253,080km
長かったです、2ヶ月と10日。
2018年10月1日から桜木町駅タクシー乗り場が優良タクシー乗り場化されたのは既述の通りです。
私は当時☆☆でして、10月1日から16年間職場としてきた桜木町駅へ入構出来なくなっていました。
慣れない横浜駅東口タクシー乗り場に身を潜め、居場所を借りて営業させて頂く、そんな感じの毎日を送りました。
制度が変わったとは言え、16年も居場所にしてきたのです。
例えて言うなら、職場を追われた、会社をクビになった、恐らくそれに匹敵するくらいの精神的ダメージも受けました。
まあ、それもこれも今日から一切無しになりました。
桜木町復活の日が来ました。おまけに羽田空港乗り場にも晴れて入構出来るようになりました。
見よ! ☆☆☆だぜ!!
気持ちも新たに、安全運転、法令遵守を励行して参ります。
でも、交通違反で捕まったら、☆☆☆は無くなって即刻 “流浪の民” に陥落です。
お願いだから、ロンドンタクシーがゆっくり制限速度で走っていても、後ろから煽らないで下さいね。
第24話 楽天ペイ&LINEペイ 取扱い開始
2019/01/18 累積走行 257,589km
本日からQRコード決済を導入致しました。
スマホにアプリをインストールするだけで、決済用端末を新しく買うこと無く取り扱い開始出来るので、
私にとっては非常にお手軽です。 決済のスピードも非常に早くて実に簡単、お客様にとっても、
私にとっても、良いことずくめですね。 おまけに決済翌日には銀行口座へ若干の手数料を引かれますが自動入金してくれます。
組合へ出掛けて行って換金する必要が無い。 お金が向こうから歩いてくる、何と便利なことでしょう。
交通系キャッシュレスならSuicaは知名度が高くて、“ピ!”と一発の素速さでキャッシュレス決済の便利さを世に知らしめました。
正に交通系の王者と言っても過言じゃ無いでしょうが、この王様はたいへん我が儘で
「タクシーメーターに連動させろ」とか、
「決済端末は40万円以上です」 とか仰る。
メーター連動など何故必要なのでしょうか? メーター表示額以上に請求したってお客様が支払わないでしょ?
もう訳が分からないですね。 貧乏個人タクシーにとって、既存のハードウエアに改造を加えるなどは実にハードルが高いわけです。
で、QRコード決済はスマホさえ有れば追加費用一切無し、という甘い誘惑に導入を決断した次第です。
決済実績ですが、楽天ペイは徐々にですが増えてきています。
LINEはメジャーですし、“割り勘”機能が便利かな~と思っていましたが、不思議に未だ一件も実績ありません。
タクシーで使えるなんて、浸透していないんでしょうね。
それと、LINEペイには、お客様があらかじめお金をチャージしておかねば使えないという欠点があります。
チャージってハードル高くないですか?
楽天ペイは、お客様のクレジットカードに紐付いているので、そもそもチャージの必要が無いし、
カード決済上限まで使えるので非常に便利です。 この辺も、利用客数の差に現れてきているのかも知れません。
スマートで便利な決済ツールですので、皆さんご利用になっては如何ですか?
第25話 なぜ、自動ドアじゃないの??
2019/02/05 累積走行 260,057km
「すみませ~ん!自動ドアじゃないので、開けて乗って下さ~い!」
「Please open the door by yourself ! Junp in !」
こんな感じ。
運転手が降りていってドアを開ける、業界では “ドアサービス” と言いますが、
そんなのサービスでも何でも無くて至極当然程度に私は考えています。
別に格好を付けて言うのでは無くて、そうすることが安全だし、事故防止上ベターな方法だと思うからです。
まあ、今まで自動ドアで相当嫌な目を見てきているので、まさに自動ドアが嫌いなんですね。
自動ドアの仕様には3タイプあって、手動ロッド、空圧式、電動式ですね。
電動式は最近出てきた方法で、つぶさに見た経験が無いので評価出来ませんが、Youtubuで見る限り従来物と大差有りませんね。
手動と空圧は大栄交通時代に使用経験があります。どちらの方式も酷い物で、運転手の意のままに動かせない。
開閉途中はブランブラン状態で、ここで止まって欲しい処で止まらないし、止められない機構なのです。
強風時には開閉不能になったり、急坂では押さえていないと勝手に動いてお客様の足を挟んだり、塀や電柱にドカンと当たったり、もう散々。
後方確認が不十分で、後ろから来た自転車にヒットして人身事故になったり。
自動ドアって、運転手が雨に濡れなくて済む用品なんだと、今でも思っています。
こんな中途半端な物に改造費何十万円も出しますか?? あほくさい。
と言うわけで、私のロンドンタクシーは手動ドア。
タクシーは自動ドアでなくてはいけない、と主張するお客様が稀にいらっしゃいますが、私は耳を貸しません。
タクシーのドアは運転手が開けるもの。
そこは確かにそうですが、自動ドアは、必ずしも必要ではありません。
ただ日本の独特の文化というだけです。
流していて街でお客様をお乗せする時に、以前は降りていって私がドアを開けていました。
降りてきた私を見て、お客様は相当驚いたご様子で、ちょっと笑えるくらい。
「なんでそんなことをするんだ! 早く行け!」
ああ、こういうケースも当然ありだよな、そう思った事もありました。
それと私も右側へ降りる時に若干危険を感じていたので、ある時からRolling Takeoff(流しでお乗せする場合)
は運転席から降りずに、お客様へ声を掛けて自分でドアを開け乗って頂くようにしました。
両手に荷物を持っているなど乗降介助が必要と判断すれば、躊躇無く降りていきドアを開けて差し上げます。
それと、Standing Takeoff(タクシー乗り場での乗車など)時は、今でも100%ドアサービスです。
勿論、下車時は100%ドアサービス。これは料金精算と、忘れ物の確認です。
この6年間に3~4件の遺失物がありましたが、どれもお客様がご自分でドアを開けて出て行かれたケースでした。
「ありがとうございました~」ってそのまま発車して、
次のお客様が「忘れ物があるよ・・・」という失態。やっぱり降りていくべきだったな~と後悔しても後の祭り。
ちなみにロンドンではお客様が自分でドアを開け閉めします。
もっと言えば、ロンドンでは運転手の許可を取ってから乗ります。
○○○へ行ってもらえますか? ああ、良いですよ、どうぞ!
で初めてドアを開ける。 こうでなくちゃ!! 乗車をお断り出来る(爆笑)。
運転手が、「いや行けないんだ」 と言えば乗客は引き下がる。 これ当たり前だと思います。
路肩に止まって日報を書いていると、何も言わずに勝手にドアを開けて乗り込む客がいます。(を“様”ではない!)
読者の皆さん、あなたは違和感は感じませんか?
もし、あなたの家の座敷に勝手に見知らぬ人が上がり込んだら???
だって、タクシーでしょ?って、それ理由になりますか??
常識というか、最低限のマナーが問われているのではないでしょうか。
自分には最大限の満足を、他人には限りなく無頓着で、そんな社会は私は御免被ります。
第26話 車間距離、取ってますか?
2019/03/11 累積走行 263,775km
昨今、煽り運転だとか話題に上がることが多くなっていますね。
本当に毎日至る所で“煽ってるな~”という場面に遭遇します。
大柄なSUVだとか、外車、あとは高級ミニバンって奴らが「え~っ!」って言うくらい前走車に接近していく光景を目の当たりにしますね。
私に対するものでは、露骨なのは流石に少なくなりましたが、車線変更を妨害してくるケースは相変わらずですかね。
タクシーなんで(と言うのも変ですが)、お客様のご指示で致し方なく車線を変わったり、角を曲がったりという場面。
なるべく早めにウインカーを出して意思を表示して、勿論後ろを見て、居ないね、
で動き始めると急に速度を上げて接近する奴。 進路を妨害しようという意図丸出し。
ウインカーを出さないで行けばOKだったのかな?(笑)なんて、ね。
ナンバーを見たら「666」(爆笑)
俗に「悪魔の番号」ってやつですよね、「獣」とも言いますね。
触らぬ神に祟り無し
イタズラ程度ですから別段気にもしませんが、録画はしてますので、悪質なもの、お客様に被害を生じる者に関しては躊躇無く警察行きです。
一発アウトで、黙って半年間免許が止まります。
まあ、車間距離。
昨日も帰りしなに産業道路で大々的に車線を塞いで事故の現場検証をする光景を見まして、聞けば5台の関係する玉突き事故があったよし。
止まれないから衝突つかるわけで、止められるように走れば良いんですよね?
つまりは速度と車間距離ですわ。 速度が上がれば車間は広く取る。 この当たり前のことが知らないんだか?出来ないんだか?
知りませんが、ま、衝突つかる。
私は自分に言い聞かせているのですが、
「車間は自分に掛ける保険」
だから絶対に、速度に対して相応の保険を掛けます。
時間に追われて焦って走っている時も、縦間隔と横間隔には相当の注意を払って保険を掛けます。
でないと危ないもの、マジで。車間を空けるとドンドン他車に割り込まれて、、、なんて気にしません。
そんなに到着時間に変わりはありませんから(キッパリ)。
結局抜いていった車に、先の信号で追いつけますからね。
そいつが先行できる条件は、止まるべき赤信号を無視して行った時です。
横でパトカーが見ていたら、即刻御用。 時々そんな場面を見ますが、やはり痛快ですね(失礼)。
社会ですから100人居れば、変なのが1人や2人は居ますね。
全部が全部真っ当な人ばかりだと、これまた息苦しい。
かといって調子こいて我が儘を続ければ、必ず何らかの形で天罰はご当人に降りかかります。
ま、とにかく車間距離は大切です。
第27話 かったるいって?
2019/04/22 累積走行 268,714km
「個人タクシーの運転は、かったるい」
法人時代に、お客様からよく伺った話です。 朝は急いでいるからタクシーに乗る人が多いですね。
急いでいるのに、個人タクシーはマイペースでゆっくり走るから嫌だ、とか。
その点、あんた(^_^)bはビュンビュン走って気持ちいいねえ、なんて言われて得意げになっていた私。
全くお恥ずかしい暴露話でございます。
タクシーは「緑色のナンバー」を付けています。 普通の自家用車は白ナンバーですよね。
この違いは、お金を取って運行する、所謂営業用車両か否かの違いです。
運送屋さんのトラックも荷主の依頼を受けて運賃を貰って走る、だから緑色です。
緑ナンバーを運転すると言うことは、ましてやバスやタクシー、人を乗せて商売にする我々には、
貨物以上の安全性と快適性が求められるのは想像出来ると思います。
トラックは一種免許で運転出来ますが、旅客相手の業種は二種免許という一段上の安全性が担保された(はずの)免許を持ったドライバーが担います。
さらに個人タクシーの免許は二枚あって、道路を運転するための二種免許と、タクシーを経営することを許された事業免許(営業認可証)があります。
法人タクシーのドライバーさんには個々に営業免許が出るわけでは無く、その所属会社に対して国が営業免許を下付しているのです。
僕ら個人タクシーは、会社で10年以上勤務していわゆる修行期間を経て、無事故無違反などの一定の基準を満たした上で個人タクシー国家試験に臨みます。
合格しても、今度は経営能力、資産資金力、犯罪歴など洗いざらい3ヶ月も掛けて国が審査した挙げ句、ようやく事業免許となるわけです。
免許となっても、交通違反や刑法犯罪を犯せば免許は簡単に吹っ飛びまして、タダの二種免許に、いや路上から追放される憂き目を見ます。
法人タクシーとの一番の違いは、事業免許の再交付が事実上不可能なことですね。
一生一枚の個人タクシー免許、とでも言いましょうか。
もしも事故を起こしたとしましょう。 会社のタクシーであれば、車庫に寝ている余剰車両が数台有りますから、
1台を事故で潰してしまっても直ぐに乗り換えて営業に出られます。 無事故手当は無くなっても、ほぼ生活に支障はありません。
我々個人タクシーは1人1車制と言いまして、事業免許+運転免許に車両ナンバーが紐付いていまして、どれが欠けても営業に出られません。
壊れたから別の車で営業、これは出来ない仕組みなのです。 つまり、事故翌日から収入がゼロ。
車の修理や買い換えに多額の借金を抱え込み、翌年からは多額の保険掛金の支払いが待ち構えています。
どの道もプロは厳しいです。 運休は無いのが一番で、事故は起こしても貰っても、得することは一切ありません。
クルマや行灯に傷を付けないよう、安全運転、防衛運転、法令遵守、点検の励行、プライドと覚悟を持って毎日を送ります。
ゆえに個人タクシーは自分の車を大切にします。ましてやロンドンタクシーなどと言う日本に稀な車を使うなら尚更。
故障や事故といった運休の種は自ら蒔かないように慎重になります。
「まったく~、こんな深夜なんだから信号いちいち止まるなよ~」
「マイペースで走るんじゃね~よ~。飛ばせよ~。」
先日、本当に15年ぶりくらいにお客さんからこんな苦情を言われました。
まあ、苦情じゃないですよね、言い掛かり。都内までのお客さんでしたが、途中で降りて貰いました。
というか、引きずり降ろしちゃいました。強制降車(爆笑)。
「かったるい運転でスミマセンね、料金を払って降りて下さい」
支払わなければ即時110番の心積もりでいましたが、案外すんなり降りたので、事なきを得ました。
個人タクシー免許は一生一枚。かったるくてスミマセン!
第28話 宗旨替え
2019/05/29 累積走行 272,453km
私は浮気者では決してありません。
いきなり何の話かと思われたかも知れませんが、今回は電車の話です。
生まれながらの鉄道ファン、中でも電車、しかも京急ONLYだった私ですが、最近気になる存在が・・・
京急は、独特の赤いボデーに群を抜くスピード感溢れる走りで、その筋の皆さんの中では「ハマの赤いあん畜生」と呼ばれています。
京急レッドは深みのあるエンジに近い赤ですよね。
線路は一本に繋がっていますが、千葉の京成電車も赤い時代がありました。
赤と言うよりオレンジに近い赤で「ファイヤーオレンジ」でしたね。
70年代後半に成田空港他の大型投資が嵩んで、手を広げすぎた所へオイルショックが襲い、大手私鉄でありながら電車廃止の一歩手前まで行きました。
経営合理化で電車をオレンジ一色に塗色変更しましたが、それが正に【経営難だから火の車】だと揶揄されましたね。
京成は何度も塗色を変更していて、私の印象に残っている京成赤電と言えば写真の塗色で、胴回りがオレンジ、窓下にミスティラベンダ色の帯、帯上は濃いクリーム色という配色のものでした。
帯にはステンレスの飾り帯まで付くという、京急ファンから見るとちょっと贅沢な、素敵な色でした。
車内もピンク系の壁に赤い座席モケットで、これは当時の国鉄急行用2等車(グリーン車)の車内配色でして、これまた高級感を醸し出していました。
鉄道ファンなら誰でも知っているのですが、西の方角へ目を転じると、そこにも実は赤い電車って走っているわけでして。
名古屋鉄道です。
最近はご多分に漏れずステンレス無塗装車体でローコスト路線に走っていますが、今も真っ赤な電車は健在です。
こちらの赤はスカーレットという赤で、とても華やかな色です。
この色を採用したのは古くて、1961年6月1日に登場した稀代の名車、パノラマカー7000系に遡ります。
画像素材:PIXTA
パノラマカーは車輌デザインを工業デザイナーの萩原政男氏に依頼、スカーレット色は岸田劉生門下の画家杉本健吉氏の案だそうです。
杉本氏は名鉄百貨店開業時の包装紙をデザインした縁らしいです。
小田急のロマンスカーの方が洗練されたデザインで・・・等と言う人も居られますが、なんと言っても運転席を屋上に配置して前面に展望席を付けたデザインは、このパノラマカーが日本初。
当時の重役がイタリア視察に行って、セッテベッロと言う特急電車のデザインに惚れ込んでパクったとか言われています。
しかし、これには更に深い話があって、白井昭さんという一電鉄社員の進言が副社長を動かしたというのです。
白井さんは名鉄を退社したあと、つぶれかけていた大井川鐵道を再生させた立役者でもあります。
人間の本質として、過去よりも未来が見たいはずだ。これから作る展望車は“未来”が見えるものでなければならない。ことに、子どもにそれを見せたい。
(高瀬文人著『鉄道技術者 白井昭』から)
副社長土川元夫氏も、全ての乗客が前を見られる展望車を構想していたようで、見事に一致、日本初の前面展望パノラマカーのコンセプトが生まれたのです。
しかし、組織を動かすのは容易ではありません。
当時踏切事故が頻発して乗客や乗務員に死者が出る事故も経験していた名鉄では、「乗客を危険に曝す」と、運行を統括する運転部長が車両部に猛抗議を申し入れたのです。
砂利を満載した大型ダンプと衝突しても展望座席まで被害が及ばない設計が求められたのです。
そんなの無理でしょ? を可能にしたのは、我々自動車業界でも馴染みのある「カヤバ工業」でした。
250t大型油圧ショックアブソーバーを2本車両前面に配置すれば、客席まで押し込まれないように出来るというのです。
写真のヘッドライトケースを見ると灯具の横にあるグレー突起がカヤバのダンパーです。
“ダンプキラー”
これがパノラマカーの別名です。
運行開始から半年ほど経った1961年11月29日、名古屋本線木曽川堤駅付近を特急新岐阜行きとして走っていたパノラマカーの前に、
砂利を満載した大型ダンプカーが警報を無視して入り込んできたのです。
電車の時速は85km/h。ダンプカーは40m引きずられ、パノラマカーは286mも走り木曽川橋梁の中央部付近で停止したのです。
ダンプカーが衝撃で反転して電車側面にぶつかった際に側面ガラスが割れ、その破片が当たって乗客8名が軽傷を負いました。
しかし、衝突した展望席のガラスはひびが入った程度で、展望席に座っていた乗客は無傷。
その後の調査で、車体は完全に原形をとどめていて、衝撃吸収ダンパーは設計どおりに機能していたことが明らかになったのです。
パノラマカーは1975年まで増備が続き総勢188両(7500系含む)、本線から支線まで各駅停車から特急まで、幅広く活躍して名鉄の一時代を築き上げました。
そして2009年8月30日、鉄道ファンばかりか沿線の一般市民も名残りを惜しんで最後の姿を見送るなか、引退したのです。
未来を見据える確かなコンセプトと創造を支えるしっかりした技術力。
経営に携わる身になって、この手のお話は心に響きます。
同じ赤い電車同士、宗旨替えしちゃおうかな~
第29話 転覆しなくて良かったね
2019/07/02 累積走行 276,483km
6月19日(水)14:52頃、厚木市船子の踏切で起きた小田急電車と乗用車の衝突。
当該乗用車は千切れてグチャグチャになってしまいました。
ニュースを見て、壊れ方からして軽自動車かと思いましたが、アルファードでしたね。
これは電車が相当の勢いで行ってるからに違いない、そう直感しました。
京急的常識に照らしてみますと、乗用車の信号無視による直前横断(自殺行為)以外の何物でもありません。
ところが、報道された内容では単なる踏切閉じ込めが原因だそうです。
ありえないよ、小田急って踏切障検付いてないの??
京急は自動車の通る踏切には必ず支障検知器が付いていますんで、こんなのクルマが警報無視して直前横断でもしない限り、ほぼほぼ電車が手前で止まってしまうから事故には至りませんわ。
京急よりも圧倒的に踏切の数が多いであろう小田急ですが、テレビCMを打つお金があったら、踏切支障検知器を一個でも多く付けましょうよ、小田急さん。。。
それにしても、アルファードはひとたまりも無かったですね。
乗用車の中では重い部類で、車重は2tくらいです。
対する電車はというと、10両編成370tに速度の自乗倍の衝突エネルギーを持っていってまして、無理もございません。
衝突した先頭車両は軽いので脱線し100mほど走って止まった様子です。
電車は本厚木を出て、一直線の下り坂を気持ち良く下り、100km/h位は出ていたでしょう。
ちなみに100km/hで走行中の電車は、30秒で810m進みます。
現場は高架を下って左にカーブしながらの緩やかな上り坂。
左カーブの先で運転士からは見通しが悪い場所ですね。
踏切の手前150mには非常発報信号機があり、これは手前の直線上から見えます。
200m手前くらいから踏切は視認できます。
でも、あっと思っても、もう止まれません。
では、100km/hからの急ブレーキで、どれくらいで止められるか?
中学物理?の問題ですね。非常制動の実効値は4.0~4.5km/h/sです。
空走距離を考えに入れて約380m弱、時間はおよそ26秒が正解です。
踏切で当たって100m行き過ぎたのですから、電車に自動で急ブレーキが掛かったのは踏切の280m手前、衝突19秒前くらいでしょう。
この事から衝突時の速度は58km/h程度だったと思われます。
アルファードを運転していた女性は、遮断棹が降りて閉じ込められたので踏切の非常ボタンを押したと言います。
一般的に踏切遮断機は遮断完了から30秒くらいで列車が通過するように設定されています。
恐らく運転士からクルマは未だ見えておらず、非常発報で電車に自動ブレーキが掛かったものと思われます。
現場が見通しの悪いカーブの先だった事。これが直線上の踏切で運転士の視認が早ければ、衝突はしなかっただろうと想像できます。
我々は、警報器が鳴って遮断棹が降りてしまったら、“躊躇無く” 非常ボタンを押さないと衝突するって思っていた方が良いです。
しかし、自動車運転者の責任だとは言っても、人間は間違いを犯す生き物です。
自動車の通る踏切に、支障検知器が無いってのも、小田急さん、どうかと思いますが。。。
今回本当に、転覆しなくて良かったです。。。
第30話 横浜個人のボランティア活動
2019/08/04 累積走行 279,773km
毎日暑いですねえ。
子供達は夏休み、世間のお父さん方もぼちぼち盆休みという今日この頃です。
この猛暑の最中ではありますが、今日は“横浜個人タクシー・ボランティアの会”主催の日帰りドライブ会へ参加してきました。
行き先は川崎市多摩区にある「よみうりランド」です。
個人タクシーのおっさん達がみんな揃って遊園地へ行くのですかぁ??
などと疑問に思った方もいらっしゃるでしょうね。
これは横浜個人タクシー協同組合の伝統行事で、毎年継続しているボランティア活動なのです。
横浜市内には多くの児童養護施設があり、その一部施設と協力してそこで暮らす子供達に日帰りドライブ旅行をプレゼントしているのです。
今年の参加車両は36台、神奈川個人、浜個人からもそれぞれ2台ずつ応援も加わり、総勢130名の子供達と施設職員さん達を招待しました。
昭和36年に行われた第1回ドライブ会は新聞にも取り上げられ、神奈川県警のパトカー先導も付くなど、社会的注目を浴びたものでした。
それから営々と歴史を積み重ね、箱根、ドリームランドなど行き先も変遷してきました。
平成23年にはキワニス日本財団から優れたボランティア活動として助成金を受けました。
最近は「よみうりランド」さんのご協力を得て、子供達にプール遊びやジェットコースターに乗るなど、遊園地で一日過ごしてもらいます。
早朝のお迎えと夕方の帰園は、勿論我々の営業車でドライブです。
個人タクシーというと、昨今は高齢の運転手が多く見られ操縦が不安だとか、法人タクシーとの差別化で高級車指向ではあるものの、
運転手の態度が横柄だとか、高級車に乗せてやっているんだぞ感が満載だとか、マイナスイメージが先行してますね。
まあ、確かに個性的な面々が多くいますが、彼らどこにでも居るような普通のお爺ちゃんやおっさん達なんです。
社会貢献を強く意識しているかというと、それほどでもなく、毎年恒例の行事としてマンネリに陥っている感はありますが、
690人もいる当組合員のうち40名以上の方々が手弁当で参加し、子供達の笑顔が見たくて休日返上でハンドルを握る訳です。
今年はいつやるんだぁ?
なんて、ぶっきらぼうに事務局のドアを叩きながら参加希望をする姿を見るにつけ、心根は優しい人達だなあと思います。